顎が外れたら自分で治せる?適切な治し方や外れないようするポイントを解説
あくびをしたり、歯科治療中に大きな口を開けて顎が外れてしまった経験はありませんか。顎が外れたことで口が閉じられず、慌てた経験がある方もいるかもしれません。
顎が外れてしまう原因には、口を大きく開けることだけでなく、噛み合わせの悪さや顎関節の変形、顎関節症などさまざまな要因が関係しています。
特に顎が頻繁に外れてしまう場合は習慣化が懸念されるため、早期の治療がおすすめです。
自分で顎を元の位置に戻すことも可能ですが、悪化や習慣化を防ぐためにも口腔外科などを受診しましょう。
この記事では、顎が外れる原因や、万が一顎が外れてしまった時の治し方、顎が外れないようにするポイントについて解説しています。
顎が外れる顎関節脱臼とは?
一般的に「顎が外れる」と表現される症状は、顎関節脱臼と呼ばれます。頭蓋の側頭骨と下顎をつなぐ関節が何らかの影響で外れてしまった状態です。
顎が外れる原因はさまざまで、大きく口を開けた際、あくびをした際、打撲などが影響することがあります。
顎が外れてしまうと、痛みや不快感、下顎が突出、唾液の飲み込みができなくなりこぼれ出る、急に口を閉じられなくなるなどの症状が見られます。
顎が外れる顎関節脱臼には以下3つの分類があり、それぞれ症状や発症する原因が異なります。
顎関節脱臼の分類 | 主な原因 |
---|---|
前方脱臼 | 下顎頭が前方に出向けて脱臼した状態。大きな口を開けたりしたことが原因となり、 関節を元に戻す簡単な施術で治療可能です。 |
後方脱臼 | 下顎頭が後方に向けて脱臼した状態。下顎先端に外部からの衝撃が加わることが主な原因です。 強い衝撃によって顎関節周辺が骨折しているケースもあります。 |
側方脱臼 | 交通事故などによって、下顎やその周囲に強い衝撃が加わり、横ずれを起こした状態。 交通事故などが主な原因となるため、顎関節脱臼以外にも怪我を負うケースがあります。 |
また、顎が外れる顎関節脱臼は、脱臼して間もない新鮮例と脱臼した状態が3~4週間以上放置された陳旧性に分けられます。
顎関節脱臼を長期間放置してしまった場合、関節周囲の組織が変化することで治療が難しくなるため、顎が外れてしまった場合は早期の段階での治療がおすすめです。
歯科医院や口腔外科で適切な処置を受けましょう。
顎が外れる原因
顎が外れる原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 大きな口を開けた
- 外から力が加わった場合
- 噛み合わせが悪い
- 顎関節の変形
- 顎関節症の可能性
ここでは、顎が外れる主な原因について解説します。
大きく口を開けた
大きな口を開けることで顎が外れる原因となるケースがあります。
大きなあくびや歯医者で治療する際に大きく口を開くなど、普段よりも大きな口を空けた場合、下顎頭の正常な可動域を超えてしまい顎が外れます。
また、歯科医療などで長時間口を開けていると、顎周囲の筋肉が緊張してしまい顎が外れやすくなるケースがあるため、口を長時間開けるのは避けておきましょう。
外傷など外から力が加わった場合
外傷など外から顎に向けて力が加わってしまうことも、顎が外れる原因です。
例えば不意の転倒、ボクシングやレスリングのような激しいスポーツ中の衝突、転倒、打撃などで強い力が顎に加わると、外傷や打撲とあわせて顎が外れる場合があります。
また、交通事故などによって強い衝撃が加わった場合は、顎が外れるだけでなく骨折なども併発している可能性があるため、症状に応じた治療が必要です。
噛み合わせが悪い
噛み合わせの悪さも、顎が外れてしまう原因のひとつです。
不正咬合によって噛み合わせが悪い場合、左右のバランスが取れた口の開閉ができません。その結果、顎全体が滑ってしまい、口を開ける時に正常に動かすことができず、顎が外れやすくなってしまいます。
また、不正咬合による噛み合わせの悪さは歯ぎしりや食いしばりが増える原因です。体重の2~5倍もの負荷がかかる強さの歯ぎしりや食いしばりは関節に負担をかけ、顎が外れやすくなる原因となるケースもあります。
顎関節の変形
顎関節の変形は顎が外れやすくなる原因です。
顎の関節は、下顎骨と下後窩、関節円板から成り立っていますが、なんらかの原因で顎関節を構成する骨に変形が生じると顎が外れやすくなってしまいます。
例えば、下顎骨と下後窩の間にあるクッションの役目を担う関節円板が年齢によってすり減ることも顎が外れる要因の一つです。
また、噛み合わせの悪さによって負荷がかかったり、転倒や事故、スポーツでの外傷によって顎関節が変形してしまうと、下顎骨の固定が難しくなり、結果的に顎が外れやすくなります。
そのほか、顎の関節を支える筋肉、靭帯や腱の衰えも顎が外れる原因です。
顎関節は筋肉、靭帯や腱などによって骨が安定してつながれていますが、疲労や緊張感、衰えなどが原因となり、顎の位置を元の位置に戻す力が低下します。
不安定につながった顎関節は、口の開閉によって外れやすくなってしまうでしょう。
頻繁に顎が外れる場合は顎関節症の可能性も
大きな口を開けたり、事故やスポーツなどで顎に大きな力が加わったり、一過性の原因で顎が外れたのであれば顎を元の状態に戻す治療で問題ありません。
しかし、頻繁に顎が外れる場合は顎関節症の可能性があります。
顎関節症とは、口を開ける際にカクカクと音がなったり、痛みが生じる疾患です。主に以下のような症状が見られた際は、顎関節症として診断されます。
- 口を開けると音がする(股関節雑音)
- あごが痛い(顎関節痛・咀嚼筋痛)
- 口が開きにくい、または開かない(開口障害)
症状の強さには個人差があるものの、顎の正常な動作の妨げになり、症状が悪化してしまうと顎の機能が壊れてしまう可能性があります。
また、顎関節症にはさまざまな原因がありますが、一般的に噛み合わせの悪さによるものが多いです。
あくびや歯科治療の際に大きな口を開け、顎が外れてしまったことがキッカケとなり、その後習慣的に顎が外れやすくなってしまうケースもあります。
顎が頻繁に外れるようであれば顎関節症を疑い、歯科医院や口腔外科で診察を受けるようにしましょう。
顎が外れた場合の治し方
顎が外れてしまった場合、口が閉じられなくなって動揺してしまうかもしれませんが、落ち着いて顎の位置を元に戻すことが大切です。
応急処置として自分で顎を戻すことも可能ですが、慣れていないとうまく戻せなかったり、痛みを伴う場合もあるため、処置は簡単ではありません。
整復処置を行ってくれる口腔外科などを受診し、顎の位置を元に戻してもらいましょう。
また、外れた顎の治療は期間が早いほど整復可能です。時間が経過すると治療が困難になるケースがあるため、発症した際は早い段階で治療をしていきましょう。
ここでは、応急処置として自分で顎を戻す方法や、口腔外科などを受診して整復してもらう方法を解説します。
応急処置として自分で顎を戻す
顎が外れた場合、以下の手順で応急処置として自分で顎を戻しましょう。
- 顎が外れている側を確認
- 顎が外れた側の奥歯に反対側の手の親指を置いて、残りの指で下顎をつかむ
- 親指に力をいれて下方向に押す
- 親指と残りの指で下顎をつかみながら喉の方向に押し込む
うまくいけば、外れた顎がカクンと入り、顎が元に戻ります。
ただし、あくまでも応急処置としての整復方法です。顎が外れて口が閉じられなくなった状態を治すための応急処置となるため、口腔外科等で専門家の治療を受けるようにしましょう。
口腔外科などを受診する
痛みが強い場合や続く場合、自分で顎を戻すのが難しい場合、頻繁に顎が外れてしまう場合は、口腔外科を受診して専門家による治療を受けてください。
顎が外れて間もない新鮮例の場合は、ヒポクラテス法という整復法を用いた治療が一般的です。ヒポクラテス法によって顎を元に戻す手順は以下の通りです。
- ガーゼの巻かれた親指を下顎の奥歯の表面に置く
- 奥歯の表面に置かれた親指以外の4指で下顎を支える
- 親指で下顎を下方向に押す
- 下顎を後ろに押し込むようにして顎を閉じる
整復法自体は単純な内容ですが、手順を知っておくことで安心した気持ちで治療にかかれるでしょう。
治療後は再発の可能性があるため、痛みや違和感があればすぐに口腔外科等に相談してください。再発防止のために治療後しばらくは大きな口を開けるのを避けるなど、堅い食べ物を避けて顎への負担を減らしましょう。
帽子で顎を固定するオトガイ帽や、包帯を巻いて口が開かなくするような処置が行われる場合もあります。
また、顎が外れてしまうのが習慣化している場合は手術が必要なケースもあります。顎を動きにくくする頬骨突起形成法や顎を戻りやすくさせる関節結節削除術、関節頭削除術が用いられます。
ただし、手術の必要性については症状によって異なるため、医師の判断が必要です。
顎が外れないようにするためのポイント
口を大きく開けたり、あくびをした時に顎が外れる顎関節脱臼ですが、以下のポイントに注意するだけでも顎が外れる予防になります。
- 可動域を超えるような大きな口を開けない
- 歯並びや噛み合わせを改善させる
- 顎に負担のある癖を見直す
ここでは、顎が外れないようにするためのポイントを解説します。
必要以上に大きな口を開けない
顎を外れないようにさせるには、必要以上に大きな口を開けないことがポイントです。可動域を超えた大きな口は、顎がはずれる原因となります。
特に顎が外れやすいと認識している方は、あくびやくしゃみ、食事、歯科治療などの際には、口を大きく開けないように意識しましょう。
例えば、あくびや歯科治療などで大きな口を開ける必要がある場合は、ゆっくりと丁寧に開いたり閉じるようにしたり、口を開閉する際に手のひらで顎を支えて、口の開き過ぎをコントロールするのがおすすめです。
また、歯科治療の際であれば、顎の負担を楽にできるバイトブロックという器具を使用できる場合もあるため、大きな口を長時間開けるのに不安がある方は、医師へ確認してみましょう。
歯並びや噛み合わせを改善させる
歯並びや噛み合わせの悪さは顎への影響が懸念されます。顎が外れる原因となり得るため、歯並びや嚙み合わせを改善させるのも、顎が外れてしまうのを予防する方法です。
歯並びや噛み合わせが悪い場合、顎関節に負担がかかって顎が外れる顎関節脱臼につながるケースがあります。
歯並びや噛み合わせの悪さの原因には、遺伝などの先天的原因、生活習慣や癖などの後天的原因がありますが、どちらのケースでも自然に歯並びや噛み合わせが改善することはありません。
症状を放置していると、歯並びや噛み合わせがさらに悪化し、より顎が外れる原因となってしまいます。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの矯正治療によって、歯並びおよび噛み合わせの改善を目指しましょう。
顎に負担のかかる癖に気をつける
顎が外れてしまうのを習慣化させないために、顎に負担のかかる癖に気をつけてください。
例えば、頬杖や舌で前歯を押すなどの癖は、歯並びや噛み合せを悪化させるだけでなく、顎関節に負担をかけます。顎への負担を軽減して顎が外れる原因を解消させましょう。
また、せんべいやフランスパンなどの硬い食品の咀嚼も顎周囲の筋肉に影響を与え、顎が外れやすくなる状態になってしまいます。
顎に負担のかかる癖の見直しや、硬い食品の摂取を控えることで顎関節への負担が減り、結果的に顎が外れる可能性を減らせます。
まとめ
あくびをしたり、大きな口を開けて笑ったりした際に顎が外れて口が閉まらなくなってしまった状態を顎関節脱臼といいます。
痛みや口を閉められなくなり、慌ててしまうこともありますが、外れた顎関節を元に戻す対応が必要です。応急処置として自分で顎を戻し、その後口腔外科などに受診して専門家の治療を受けましょう。
また、顎がはずれる原因としては、大きく口を開ける、外部からの力、噛み合わせ、顎関節の変形などが挙げられますが、頻繁に顎が外れる場合は顎関節症の疑いがあります。
さくら歯科口腔外科では、口腔外科と噛み合わせの専門家が総合的に診断や治療を行える体制を整えています。
顎が外れただけでなく、「顎が痛い」「顎から音がする」「口が開きづらい」といった悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
噛み合わせなどの顎が外れやすくなる根本的な原因の解決をサポートいたします。