親知らずを抜こうか悩んでいる方へ
親知らずが痛い!
こんな時、最寄りの歯医者さんに行って、親知らずの抜歯をすすめられた。あるいは、ご自身でネットで調べ親知らずを抜くかどうかお一人で悩まれている方が多くいらっしゃいます。皆さんに向けて正しい情報を配信させて頂きます。
親知らずの痛みはどうして起こるか?
親知らずの痛みは、大きく分けて2つあります。
①親知らず自体が虫歯で痛い(キーンとした痛み:甘いものや冷たいもので痛い)
親知らずは目で見て確認できるもの、目では確認できなくても実は歯茎の下にいて、手前の歯に接しているものなどいろんなケースがあります。
いずれにしても親知らずも他の歯と同じ構造をしています。したがって、他と同じく虫歯になるリスクがあります。虫歯になれば、最初は神経から遠く硬い組織が溶けていくだけなので症状は少ないです。しかし、そのまま放置してしまうと歯が溶けて、歯の中の神経(歯髄)が炎症を伴ってきます。こうなると、甘いモノや冷たいモノに反応して神経が痛くなる。体に「自分溶(と)けてますけど!!」と警報を鳴らす。これが、痛みです。
対処法:
この場合は、歯を抜かずに虫歯の治療を行うと解決できる場合があります。甘いものや冷たいもので親知らずが痛む場合はすぐにお近くの歯医者さんに相談に行きましょう。
②親知らずの周りの歯茎が痛い(ジーンとした痛み:何もしてなくても何となく痛い)
親知らずの周りは、歯茎や骨などたくさんの組織があります。親知らず自体が虫歯になっていなくても、これが痛い時がある。
実はクリニックにお越しの多くの患者さんは親知らず自体が痛むのではなく、親知らずの周りの組織が痛む状態で「親知らずが痛い」と感じ来院なさっています。親知らずの周りが痛むことを歯学では「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と言います。これは一体どのような状態かを説明します。
まず、親知らずが実際に見えているもの、そうでないもの多くのケースがありますが、基本的には親知らず自体は生(は)えようと成長します。この時、周囲の歯茎を内側から強く、そして長期に渡って押し続ける運動が起こります。この際に、歯茎や骨が炎症を伴ってくる。あるいは、親知らずが生(は)えようとしている方向に手前の歯がそれを防ごう生(は)えている。この場合などは、手前の歯が押されて痛むこともあります。このような場合は、甘いものや冷たいものでツーンとした痛みはありません。ジーンジーンとしたいわゆる鈍痛(どんつう)と呼ばれる症状が出現します。これは、親知らずが「自分生(は)えたいんですけど!」と言うサインです。これが鈍痛の正体なのです。
対処法:
親知らずの周りが痛い時は、何と言っても第一はクスリに頼ることです。親知らずに関わるクスリは大きく2つあります。
・痛み止め:抗炎症薬
痛みは炎症と言う体のサインです。これ自体を抑えるには抗炎症薬が効果的です。痛み止めは、女性の場合は日頃の生理痛薬でも効果がある場合もございますが、飲み過ぎや飲み方に警戒や工夫が入ります。詳しくは、お近くの歯医者さんに相談して頂きたいところです。絶対にしてはいけないことは、痛み止めに頼り切りになることです。体自体が痛み止めのクスリに慣れて行ってしまうと、痛みをクスリでコントロールできなくなくケースが考えられます。乱用ややみくもにクスリに頼ることは絶対に避けましょう。
・バイキンを少なくする:抗生物質
親知らずが周囲の組織を押して生(は)えようとする時、その周囲の組織は傷(いた)み、やがて周(まわり)がバイキンで感染していきます。この状態になると、もはや痛み止めのクスリだけでは効果は得られません。実際に、体の感染に対する抵抗力を後押しするクスリが必要になります。このクスリは抗生物質と呼ばれています。このクスリになると、医師または歯科医師による処方が必要となります。抗生物質は、体の免疫力をコントロールするクスリです。その使い方や量は歯科医師によってコントロールが必要になります。なぜならアレルギーなどの副反応を示す場合もあるからです。抗生物質は、ちゃんと歯医者さんで処方を受けましょう。
このように、親知らずが痛いと言ってもその原因は複数あります。
「親知らずが痛い≠歯を抜く」
これは、大切なキーワードです。当院でも、歯の本数や噛み合わせの状態から、抜歯に適している歯を厳選して処置を行っています。また、親知らずが痛む当日に抜歯をする事自体、当院では慎重に診断を行っています。
しかし、親知らずは基本的に絶えず生(は)えようとします。本当に空きあれば生(は)えようとするんです。若ければ若いほど(10代ー30代)、また中年以上になっても基本的には生(は)えようとするんです。これは面白いけど厄介です。何度も何度も親知らずが痛くなるのであれば、当然抜歯して無くしてしまうことは懸命な処置です。
抜歯は怖い!!
これは、人間当たり前ですね。私たちも怖いです。しかし、その怖さにどれだけ寄り添える歯科スタッフがいるか?また、その痛さや腫れ、そして術後のさまざまなトラブルに対応できる技術や知識がプロに求められるものです。
私たちは、月に100名以上の親知らずに悩む患者さんに向き合っています。その経験から、怖いを最小にする処置の極意を知っています。
早くて安全な抜歯術
長年、口腔外科をして何より手術の時間は最小に、そして手術する組織のダメージは最小にすることが、親知らずの抜歯で起こるリスクを少なくします。
これは、とにかく経験が全てです。日々、親知らずとひたすら向き合い、抜歯をさせて頂く経験でしか補えない工夫が必要となります。
親知らずに悩む多くの方に向けて、ぜひこのような親知らずのプロである口腔外科医にご相談をいただければと思います。